iPhone は水にそこまで強くないのでなるべく濡らさない様にしてくださいねと出会う方々に伝える様になってもう8年ほどが経ちました。

お修理にてお預かりする度に、防水が売りの各社スマートフォンと比べても水、浸水に関してはかなり防御力の低い iPhone ですが、町の修理店でディスプレイ交換修理を受けた事があったり、その時に防水テープの適切な施工がなされていなかったり、背面ガラスに割れや亀裂がある状態だったり、新品の無傷の状態でも浸水性のある iPhone に、後から、使用している上での損傷などによって余計に水などが入りやすい状態になっていれば、もはやそれは紙の本を水の中に投げ込むかの如く、濡らしてはいけないものを濡らしてしまっているのと同義なので確実に浸水・水没を起こしてしまいます。

半身浴をしながら読んでいる小説をうっかり濡らしてしまった、突然の雨でポケットに入っていた紙幣が濡れてしまった、そんな時は、素直に乾かして置くだけで済むかもしれませんが、iPhone やその他電子機器ともなるとそうはいきません。乾かして元どおりになる事もゼロではないかもしれませんが、乾かした後も起動しない、動作がしない、発熱する、などの不具合が発生する事の方が可能性としては大きくなります。

乾いた紙が濡れてもまた乾いて元の紙に戻るのとは異なり、電子機器は膨大な数の電子部品の組み合わせにより、電気の流れを動力として動作する1つの集合体、という面を持っています。スマホ１台として個、単一のイメージで存在していますが、その中には一つのリチウムイオンバッテリーがあり、一つのディスプレイがあり、2つのスピーカーがあり、3つやそれ以上のマイクセンサーがあり、4つやそれ以上のカメラがあったり、スライドスイッチやプッシュボタンがあったり、タッチセンサーがあったり、CPUやメモリーICチップがあったり、各ICチップや部品に流れる電流を制御するためのコンデンサーICチップが膨大に配置されていたり、それらを電気的に接続するための基板というベースの板があり、それらに銅などの電流を流す金属を金属を蜘蛛の巣のように張り巡らす事で正しい電流の流れを制御し、一つのスマートフォンとして成立する機能を生み出しています。

iPhone 8 Plus の水没でのお修理を行いましたが、洗浄や、ディスプレイ、バッテリーなどの交換での起動は全く見られず、サーモグラフィを使用してロジックボードのどこに発熱(異常な電気エネルギー)があるかを確認してみたところ、画像の黄色とオレンジ色で囲ったICチップが異常な発熱をしている事がわかりました。

調べてみたところ、 Li-ion Battery charger IC チップ と、Power Management IC チップ という二つのICチップである事がわかりました。

ここからICチップをリフローするか、リボールか、交換するのか、判断しながら作業を進めていきます。最終のゴールとしてはお客様の iPhone に残されたデータをそのままの状態で復旧できる事が理想のゴールですので、そこまでたどり着けるように正しい診断を行いながら iPhone 8 Plus のロジックボードを復活させていきたいと思っております。

お客様のお修理のご依頼でも、スマートフォンの修理では大きく２通りに分かれます。1つは、データが引き継げないと困るので買い替えではなく修理を選択した、という方向性のお修理で、もう1つは、買い替えより安く済むのであれば修理による端末の復旧を希望するというものです。

後者の場合はデータにそこまでのこだわりがなかったり、事前にバックアップや引き継ぎができており、内部データではなく端末の復旧を希望するという流れになるのですが、前者の場合だと、突然の操作不能状態などに多いので、LINEやお写真など、その端末の中にしか残っていない大切なものをどうにか取り戻すための目的でのお修理をご希望されるという流れになります。

どちらのご希望だったとしても一生懸命復旧に向けての修理作業を行うのですが、やはり思い入れ、思い出、というものを感じるご依頼はこちらもなんとか復旧したいという気持ちが強くなり、データを残した状態での修理をできるように模索します。